Palm Programmer's Laboratory

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Zen of Palm/1-4

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1-4 デザインの改善

 
 最後の謎かけは、デザインの改善に関わるものです。

なぞかけ4 Q: 完璧さに磨きをかけるには?

 この謎かけには挿し絵はありません。完璧さというのは概念的なものですから、自分自身の頭で想像する必要があります。

ヒント:“より完璧な連邦”とは何でしょうか?

 私達は今や、より高いレベルの悟りに入ろうとしています。学びやすく、使いやすいというのは偉大なことです。しかし、あなたの製品は競争において優位を保つために改善を続ける必要があります。ここにはパラドックスがあります。小は大を兼ねるのであれば、理屈から言って、製品がひとたびある程度のエレガントなレベルに到達してしまえば、すなわちスイートスポットをものにしてしまえば、それで終わりなのです。それ以上進歩の余地はありません。

 

スイートスポットを引き伸ばす

 では、いったいどのようにすればスイートスポットに留まりながら製品を変えられるのでしょうか? その方法は、図 1.7 に示すように、スイートスポットを引き伸ばすことです。

図 1.7 時間経過に伴う機能追加の方法

 実践的イノベーションはカーブを移動させ、時間経過にともなってスイートスポットを大きくします。1つの例は、赤外線通信(IR)です。オリジナルの Palm Pilot モデルには IR は搭載されていませんでした。なぜなら、本当の意味で使いやすく、電力消費が大きくなり過ぎないように組み込むことが技術的に困難だったからです。IR からユーザーが得るであろう利益は、その組込みコストを正当化できませんでした。その後、PalmSource のエンジニアは IR をユーザーフレンドリーな UI とともに Palm OS にエレガントに統合するために多大な努力を払いました。PalmSource はカーブを移動させ、スイートスポットを大きくしたのです。

 時間の経過にともなってスイートスポットを伸ばす例をもうひとつ見てみましょう。人々がハンドヘルド用のウェブブラウザを求めた時、PalmSource のプロダクトデザイナは本当にユーザーが求めているものはインターネットからの情報取得であることに気付きました。この問題に対する PalmSource の最初のソリューションはウェブクリッピングというもので、使い勝手を犠牲にせずに機能を追加するもうひとつの実践的イノベーションだったのです。ウェブブラウザの使用をシミュレートしようとするのではなく、ウェブクリッピングはハンドヘルドが扱うことのできる程度の情報量をインターネットから提供するようにデザインされていました。この軽量なフォーマットは、ワイヤレス接続のか細いパイプにとって理想的でした。しかし、この綱渡りはいつまでも続くようなものではありません。ワイヤレス技術の進歩にともなって、PalmSource のブラウザはより洗練され、その時点で許容できる実用レベルでウェブページを表示できるようになっていきます。それまでの間、有線モデム経由でインターネットに接続しているハンドヘルド向けには、サードパーティ製のウェブブラウザが利用できます。言ってしまえば、Palm 界は周囲のテクノロジーの変化にあわせて平衡を保ち続けるようなソリューションのバランスができているのです。

 単に機能を追加するだけでは不十分だということに注意して下さい。機能はクリエイティブかつエレガントに追加されなければなりません。さもなければ、使い勝手は劣化し、製品はスイートスポットから外れてしまいます。Palm OS ハンドヘルドと競合する製品は多くの機能を備えてはいてもスイートスポットの中に収まっていません。それは多過ぎる機能がユーザーインターフェースを複雑にしているからです。Palm OS 製品は競合製品の機能に匹敵するかまたは凌いでおり、かつスイートスポットに収まっています。

POINT
機能はクリエイティブに追加すること

 

新しい機能の発見

 スイートスポットを引き伸ばすという新しい方法により、高度な研究や開発に多くの資金を費すことなく成功を収めることができます。既に市場に存在していても、現時点では実装が悪かったり高価過ぎるような新技術はたくさんのチャンスとして存在します。必要なのは、これらの技術を見守り、その限界を理解することだけです。

 貧弱な実装の機能を持つ競合製品を見かけたら、その製品を購入して試してみましょう。持ち歩いてみて、その機能に見込みがあるかどうか、および現時点でそれが素晴らしい機能になれない理由は何かを見極めるのです。

POINT
他の製品から学ぶこと

 潜在的な新機能を評価したら、それをあなたの製品に追加することを可能にする以下の条件のいずれかまたは両方を判定しましょう。

  • その機能が時間とともに負荷のかからなくなったテクノロジーを使用している。去年の時点ではスイートスポットに収めるにはあまりにも大きいか高価、あるいは電力消費が激しかったテクノロジーでも、今年だったらそうでもないかもしれません。
  • 誰も考えつかなかったような方法で新機能を提供する実践的で革新的なアイデアを持っている。実践的イノベーションは厄介なテクノロジーをエレガントにするための鍵であり、それによって製品を使いやすいスイートスポットに留めておくことができるのです。

 スイートスポットを引き伸ばすことでハンドヘルド製品を改良するのは、上級のデザインテクニックです。ご想像どおり、この上級テクニックは最初に製品をスイートスポットに入れる時に行なった基本的なデザイン手法よりも難しいものです。いったん PC 思考を手放したら、80/20 ルールを適用してユーザーが本当に必要としている機能だけに留める方が、新しい機能を考えてそれをエレガントにスイートスポットにフィットさせることよりも簡単です。ハンドヘルドの製品デザインでも他の手法の場合と同様に、高度なテクニックを試す前に基本的な方法で使い勝手を向上させるようにして下さい。

 

なぞかけ4の答え

 さぁ、4つめのなぞかけに答える時がきました。

Q: 完璧さに磨きをかけるには?

A: 冗談でしょ? 完璧さというのは綱渡りです。環境の変化にあわせて、常にバランスを調整し続けなければならないのです。

 テクノロジーの世界では、完璧さというのは厳密に一時的なものです。あなたの“完璧な”ソリューションは、利用可能な技術やコスト、市場の影響力、およびユーザーの期待といったものの間でバランスをとっています。周囲からかかる力が変化すれば、綱渡りのバランスをとり直さなければなりません。言い換えれば、“完璧さ”というのはダイナミックなもので、静的なものではないのです。

 合衆国政府の設立者達はこのパラドックスを理解していました。それは憲法の序文にある有名な“より完璧な連邦の形成のために”という言葉に表されています。ハイスクールの英語教師は、しばしばこのフレーズが次のように言われるべきだということを強調します。すなわち、“より完璧に近い連邦の形成のために”。定義から言って、完璧なものを作ることはできません。だからより良くするのです。

 さて、憲法の草案作成者は英語の文法について理解していましたが、より深い心理学的な真理についても理解していました。それは、進化的発生のプロセスには、バランスが完璧になるいくつかのステージが存在するということです。状況が変化すれば、“完璧さ”の意味もまた変わらなければなりません。18 世紀の終わり頃では、些細なことでも言い争っていたアメリカの 13 州がなんらかの連邦を作ることができたというのは奇跡と言えます。その数年後、合衆国憲法は改善の検討が始められました。

 Palm の世界における改善は、似たような“段階的な完璧さ”に従います。問題を調査し、その時点の制約の範囲内での革新を果し、製品をリリースします。そして成功を楽しみ、深呼吸をし、サイクル全体を再びスタートさせるのです。

 この冊子の最初の方で、時間経過に伴う外界の変化に応じて特定のソリューションがどのように変化するかの例をいくつか示しました。実践的イノベーションと段階的な完璧さの原則は、Palm 経済がここ数年で世に送り出した入力技術のソリューション( Graffiti2 やキーボードなど)やウェブブラウザの根底にあるものなのです。

 これらの原則は Palm OS プラットフォームの成功の鍵だったわけですが、それは Palm OS に限った話ではありません。いくつかの成功したテクノロジーは同じ道を辿っています。例として、長期に渡って存在し続け、その多くの変化を見落としてしまいがちなユビキタステクノロジー、すなわち電話を見てみましょう。

POINT
電話技術の歴史はこのダイナミズムを実証している

 最初の電話が登場したとき、明らかな問題が出てきました。それは、どのように相手先に電話をかけるかというものです。歴代の電話技術は、当時の資源やユーザーの期待に応じ、この問題に対して異なる解答を出してきました。

 もっとも初期の電話ネットワークでは、発信者は電話交換手に話しかけ、相手先の名前を伝えていました。これはすぐに実用的ではなくなり、ひとつひとつの電話に番号が割り当てられました。ユーザーは、電話が建物と同じように番号で識別されるというこの新しいパラダイムに期待しました。次の世代では、オートダイヤルが舞台に登場しました。ダイヤラーを使用することで、発信者は電話交換手を完全にバイパスできるようになったのです。この時点で、ユーザーは速い ── そして匿名の ── コネクションという恩恵をもたらす新たな入力テクニックを受け入れられるまでに洗練されたのです。

 より最近では、携帯電話が再びユーザー体験を変えています。ユーザーは名前の一覧を見て、そこからひとつ選択すると、電話機が自動的にダイヤルしてくれます。感覚的には、電話技術は今やその起源に回帰したとも言えます。以前と同じように、フォーカスは話したい人の名前であり、番号ではなくなっているのです。

 そしてそれほど遠くない将来、人々は一意なコミュニケーション番号を(生まれた時点で?)受けとることになるという想像もできるでしょう。場所ではなく人に関連付けることで、その番号は仮想的にどの電話デバイスでも同じ人に繋がるようになります。電話番号は恒久的かつ一意な識別子となり、そしておそらくはその人の名前の裏に隠れてしまうものになるでしょう(もちろん適切なブロックとフィルタが必要とされるでしょうが)。

 PalmSource では、次のように考えています。電話のように伝統のあるテクノロジーが継続的に自ら変化していかなければならないなら、技術的に安穏としていられる企業や産業など存在しないだろう、と。

 Palm 経済 ── PalmSource 社とそのライセンシー、およびサードパーティ開発者 ── は、このようなダイナミックなバランスの上で繁栄しています。顧客のニーズを満たすために、私達は現時点でのベストを尽くします。ほとんど即座に改善することが可能であり、同様にその改善はすぐに市場にもたらされます。Palm 経済は単一の企業 ── ついでに言えば2〜3の企業 ── よりもスマートなのです。Palm 経済は、業界のいくつかの優秀な大企業の知性や決断、創意工夫を活用できますし、同様に業界のたくさんの優秀な個人開発者達の知性や決断、創意工夫を活用することもできるのです!

POINT
同じダイナミズムは Palm 経済にも働いている

 


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