Palm Programmer's Laboratory
Palm OS User Interface Guidelines/2-3
2-3 一般的なアプリケーションのレイアウトガイドライン
このセクションでは、Palm OS アプリケーションの外観について一般的なアウトラインを提供します。本書の残りの章では、それぞれのコントロールの外観に関するより具体的なガイドラインを提供します。
アプリケーションのメインフォーム
Palm ハンドヘルドでは、情報を表示するそれぞれのスクリーンはフォームと呼ばれます。一般に、アプリケーションの最初のフォームは提供される情報の概要ともっとも使用頻度の高いコマンドを実行するボタンを提示する基本フォームになります。例えば、アドレス帳は全ての連絡先のリストを表示します(図 2.8 参照)。
図 2.8 アドレス帳の最初のフォーム
基本フォームのあるアプリケーションは、レコードの詳細情報の表示と編集を可能にするため、1つ以上の詳細フォームを持つ傾向があります(図 2.9 参照)。多くのアプリケーションは、両方の目的で1つのフォームを使用します。アドレス帳は参照と編集で2つの異なるフォームを使用しますが、これは編集フォームでは多くの利用可能なフィールドがブランクのままになるからです。連絡先の表示に別のフォームを使用することは、スクロールの必要なしに情報を閲覧できる可能性が高まることを意味します。
図 2.9 アドレス帳の詳細フォーム
全ての種類のフォームの作成に関する詳細なガイドラインは、3章の“フォーム”を参照してください。
コントロール
コントロールを使用することで、ユーザーはコマンドの実行やオプションの設定、データの編集が可能になります。表 2.2 に、アプリケーションで使用することの多い基本的なコントロールと、それらのコントロールに関するガイドラインを説明している章を示します。
表 2.2 コントロール
コントロール | 名前 | 主な用途 | 詳細情報 |
---|---|---|---|
コマンドボタン | コマンドの実行 | 4章,“コマンドの実行” | |
チェックボックス | 状態の切り替え 互いに排他的でないオプション一覧の提供 |
5章,“オプションの提示” | |
フィールド | テキストの表示と編集 | 6章,“データの表示” | |
リスト | テキストの表示 | 6章,“データの表示” | |
メニュー | コマンドの実行 | 4章,“コマンドの実行” | |
ポップアップリスト | 互いに排他的なオプション一覧の表示 | 5章,“オプションの提示” | |
プッシュボタン | 互いに排他的なオプション一覧の表示 別のビューへのナビゲート |
5章,“オプションの提示” | |
スクロールバー | ディスプレイのスクロール | 7章,“スクロール” | |
スクロールボタン | ディスプレイのスクロール | 7章,“スクロール” | |
セレクタトリガー | モーダルフォームで変更可能な設定を表示 | 5章,“オプションの提示” | |
スライダー | 設定の調整 | 5章,“オプションの提示” | |
テーブル | データの表示 | 6章,“データの表示” |
コントロールの配置
もっとも頻繁に使用するコントロールをフォームのボタンの近くに配置するようにします。ユーザーは入力エリアやエリア内のアイコン、およびハンドヘルドのハードボタンともっとも頻繁にやりとりします。コントロールをフォームの下部に配置して入力エリアにできるだけ近付けることで、素早く簡単にアクセスすることができるようになります。
西洋の文化圏の出身者は画面を上から下、および左から右に読む傾向があります。そのため、(操作よりも)読むことが重要なものはフォームの上の方に配置します。水平方向には、重要なものほど左にくるようにします。
画面を混雑させてはいけません。スペースの枯渇は通常、単純化が必要な証です。余白を減らすことでフォーム上の多くのコントロールを押し潰すのは通常誤った解決法です。
ほとんどの場合、ラインやボックスを使うかわりに、余白を使って UI 要素を分類するようにします。ラインやボックスは画面を混雑させ、小さな画面を読むことを困難にします。
ラベル
付加的な説明が必要なコントロールやオプションにはラベルを使用しましょう。ラベルは右揃えに、フィールドは左揃えにします(図 2.10 参照)。
図 2.10 ラベルのガイドライン
ラベルにはボールドフォントを使用し、単語は大文字で始めます。つまり、書籍のタイトルと同じ要領で、ラベル内の重要な単語の最初の文字を大文字にします。例えば、ラベルには“Set date”ではなく“Set Date”を用います。全て小文字(“set date”)や全て大文字(“SET DATE”)のラベルは使ってはいけません。
- 注意
- このガイドで使用しているラベルという用語は、UI 要素以外のテキストラベルのみを意味していますが、UI 要素の内部に表示されるテキストもラベルと呼ばれる場合があります。例えば、図 2.10 の“Daylight Saving:”はポップアップリストのためのラベルですが、“Off”はポップアップリストの内容です。
フォント
Palm OS は4種類のフォントをサポートしています。9ポイントのレギュラーとボールド、および12ポイントのレギュラーとボールドです。
コマンドボタンやポップアップトリガー、セレクタトリガーの内部に表示されるテキストのように、ほとんどのコントロールのテキストでは9ポイントのレギュラーフォントを使用します。
図 2.10 に見られるようなラベルでは、9ポイントのボールドフォントで表示するようにします。
テキストデータを表示する場合、ユーザーが好みのフォントを設定できるようにすることを検討してください。システムに組み込まれているフォント選択ダイアログリソースにより、4種類のフォントを選択することができます。
独自のカスタムフォントを作成し、システムに組み込むこともできます。カスタムフォントはテキストデータの表示にのみ使用してください。カスタムフォントをラベルやコントロール内部のテキストに使用してはいけません。例えば、ドキュメントリーダーは文書をカスタムフォントで表示することができますが、コントロールの内容やラベルはシステムフォントをそのまま使用するべきです。
カスタムフォントを作成する場合、低密度スクリーンと高密度スクリーンの両方をサポートすることを忘れないでください。高密度フォントは低密度フォントと同じサイズですが、よりなめらかに描画するため余分にピクセルを使用するため、読み易くなっています。複数密度のスクリーン向けにフォントを作成する方法の詳細については、Palm OS Programmer's Companion を参照してください。
グラフィックコントロール
コマンドボタンとプッシュボタンでは、ボタン名のかわりに画像を使用することができます。
ボタンにグラフィックを使用するのは、類似のアプリケーションに共通する明確な前例がある場合のみにしてください。例えば、
- ウェブブラウザでは、閲覧履歴に矢印ボタンが使用されます。
- ドキュメントリーダーではしばしば矢印が次のページへの移動に使用されます。
- 多くのデスクトップアプリケーションでは、クリップボードを張り付けの意味で使用したり、はさみを切り取りの意味で使用したりします。
明確な前例がない場合、コマンドに独自の画像を作成するのは避けてください。画像の意味を明確に伝えつつ実用的な小ささにするのは困難です。デスクトップアプリケーションにはいくつものグラフィックボタンがありますが、デスクトップアプリケーションではそれぞれの画像の意味を知るためのツールチップに依存している場合があります。Palm OS にはツールチップのサポートはありません(図 2.11 参照)。
図 2.11 グラフィックボタン
これらのボタンは何を意味しているでしょうか? ユーザーにそれを教えてくれるツールチップはありません。
Palm OS におけるグラフィックの作成に関する詳細は、8章の“カラーとグラフィック”を参加してください。
カスタムコントロール
Palm OS はガジェットと呼ばれるカスタムコントロールの作成をサポートしています。UI ガイドラインが扱わないようなものが必要な場合、独自のガジェットを作成することができます。作成するガジェットは1章で概説した一般的なデザイン原則に従い、ユーザーが使い方を直観的に理解できる必要があります。
ガジェットの例としては、以下のようなものがあります。
- ランチャはバッテリ残量を表示するためにガジェットを使用しています。
- Date Book は週表示や月表示の主要な部分にガジェットを使用しています(図 2.12 参照)。
- 医療アプリケーションでは、ユーザーが患部をタップできるように、人体の輪郭を表示するガジェットを使用するかもしれません。
図 2.12 Date Book のガジェット
アプリケーションのカテゴリ
そうすることに意味があるのであれば、ユーザーが定義するカテゴリを使ってアプリケーションデータベースのレコードを整理しましょう。カテゴリは通常、より効果的な画面の利用につながります。ポップアップリストを使うことでカテゴリを切換えたり、全てのレコードを表示させることができます。
カテゴリはアプリケーションに固有のもので、データベース内に保存されています。アプリケーションは「未分類」を含めて16種類のカテゴリを持つことができます。ユーザーはカテゴリの作成や、どのレコードがどのカテゴリに属するかの選択をすることができます。
アプリケーションは事前に定義されたカテゴリを提供することができます。ユーザーがカテゴリを作成する自由を無意味にしないために、事前に定義するカテゴリの数は抑えめにしてください。カテゴリを事前に定義する場合、削除可能にしてユーザーが新しいものを追加できるようにしてください。未分類カテゴリは事前に定義しておくべきカテゴリの1つです。未分類カテゴリについてはユーザーが削除できないようにしてください。
ユーザーがどのカテゴリのレコードを表示させるか選択できるよう、基本フォームのタイトルバー内にカテゴリポップアップリストを配置します(図 2.13 参照)。
図 2.13 カテゴリのポップアップリスト
アプリケーションは通常、データベースレコードの頻繁にアクセスされない部分を変更できるようにするために詳細ダイアログを用意します。カテゴリを変更するためのコントロールは、通常詳細ダイアログに配置します。アプリケーションに単一のレコードを編集するフォームがあれば、そのフォーム上にセレクタトリガーを配置してレコードの新しいカテゴリを選択するためのポップアップリストを表示させることができます。詳細は“セレクタトリガー”を参照してください。
アプリケーションでカテゴリをサポートしないけれどもタイトルバーの右側にポップアップリストを配置したい場合、そのポップアップリストには表示をフィルタリングするカテゴリのような情報を含めるようにしてください。それ以外のオペレーションをするべきではありません。例えば、表計算アプリケーションではタイトルバーにポップアップリストを表示して、スプレッドシートに複数のワークシートが含まれる場合に別のワークシートに切り換えられるようにするなどといった場合です。